第4章 アングレカム【五条悟・教師編】
「そうか。良かったな…」
うまい言葉が見つからず、しばらく無言で歩いていると、遠くによく知る男性の後頭部が見えた。
あの髪の色は…
『…っ五条せんせ……』
声をかけようとし…止めた。
隣を歩く人に、楽しそうに声をかけている先生。
艷やかなロングヘアーに清楚な服装。
時折笑い合っては距離が近くなる。
『っ…』
「あぁ、初めて見たのか。昔から先生はいつもあんな感じだぞ。同じ人とか彼女とか、見たことがない。」
『…そ…そうなんだ。』
歩く方向が同じ二人を、自然と目で追ってしまう。
二人はそのまま狭い裏路地に入っていった。
「あぁ、あそこ…」
『…何?』
「…ホテルがあるらしい。綺麗だからお勧めだって昔、先生に言われた。」
『…っ…違うでしょ、こんなお昼から行く場所なの…?!』
気づかれないように二人の後を追うと、本当にHOTELと書かれた綺麗な建物の中に吸い込まれていった。
「…っどうしたんだよ、急に。」
『入って行った…』
「だから言ったろ。………雫?」
何かが突き刺さったように胸が痛い。
あれ…?
何で私…
「…?雫、行くぞ。」
『……ごめん、用事できた。先帰ってて。ごめんね。』
「…っえ?おい、雫っ……」
恵の側から離れたくて、裏路地を全力で走る。
どこへ向かうでもなく、ただひたすら道を走った。
『はぁっ……はぁっ……』
いつだったか五条先生とも、こんな風に全力で走ったことを思い出す。
パタパタと落ちる涙の粒が地面を濡らした。
『…大人だもんね。普通だよね…そういうの。』
どこかで期待していた。
楽しくお話してお茶をして、そんな時間が楽しみになっているのは五条先生も同じなんじゃないかって…
『…ばっかみたい……』
私五条先生のこと
好きになっていたんだ。
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"雫、戻ってる?メシ食いに来なよ。食堂で釘崎と待ってる。"
"雫、どうしたの?疲れたなら虎杖とご飯持っていくわよ。どうする?また連絡して。"
私…寝ちゃってたんだ。
少し前に二人から連絡があったことを確認する。
『…行かなきゃ。』
重い体を起こし、ゆっくりと立ち上がる。
コンコンコン…