第4章 アングレカム【五条悟・教師編】
「少なくとも私や虎杖にはお世辞にも愛想がいいとは言えないし、いつも喧嘩腰だし、優しいなんて思った事もないわね。」
『そうなんだ…』
「全部雫の為なのよ。雫が中心なの。」
『そんな事っ…』
「だからさぁ、あんな奴があんたには唯一誠実なんだから、その想いは本物ってコトよね。
あんたを想う気持ちだけは認めるわ、私も伏黒の事。」
『………』
「いいんじゃない?顔も悪くないし。私のタイプじゃないけど。」
『ん……』
「他に好きな人でもいんの?」
『えっ…いないよ…』
「じゃあいいじゃない、付き合っちゃえば。」
『うーん……』
「まぁ、じっくり考えてもいいけどね。あんたがそういう気持ちになるまで。」
恵の優しさが私にだけ向けられていたなんて、考えてもみなかった。
恵が彼氏なら楽しそうだし、幸せなんだろうな。
けど…
私も恵が好き、と強く思えるまでは付き合うのは違うのかもしれない。
携帯に目をやると、恵からのメッセージに気づく。
"昨日の事、ごめんな。返事はゆっくり考えてくれたらいい。待ってる。"
改行もない、淡々とした内容に笑ってしまう。
私は安心して、とろとろと眠りについた。
「お帰り、二人共。僕がいなくても大丈夫だった?」
「余裕、余裕。まぁ、雫はちょっと油断したけどね。」
『ホントに…危なかったので気合を入れ直さなければ、と思いました…』
「そう……」
食堂で野薔薇と二人、昼食をとっていると、五条先生から連絡が入った。
"今夜、部屋においで。"
この間の事もある。少し警戒しなければ…そう思ったけれど、私に任されたのは部屋の掃除だけだった。
「ありがとう、お疲れ様。」
『はい……』
綺麗になった部屋で、先生がおもむろに箱を取り出した。
「これ、今日街で買ったんだけど、雫好き?」
『えっ……このクッキー、テレビで見たことあります。なかなか買えないやつですよね?凄い…先生並んだんですか?』
「ちょうどそっち方面に用事があってね。一緒に食べよう。」
『…っ…やったぁ、ありがとうございます。』
お茶を淹れ、二人でカラフルなクッキーに手を伸ばす。
『美味しいですっ…』
「ふふっ、それならよかった…」
先生とこんな風にお茶をするなんて初めてだ。