第4章 愛と情は紙一重(イルミ)★
結局、起きてからも身体を重ねることはなくて少し他愛もない話をしたあと終了の時間を迎えた。
「はい、これ今日の分」
『ありが…ん?何か多くない?』
受け取った封筒は厚みがあり、ずっしりと重い。
「そう?気にしないで」
(いやいやいや…うちって料金設定高めだけど、これ3倍くらいあるよ!?)
「それで、また予約したいんだけど」
『えっ!ほ、ほんと?私でいいの?』
「うん、シンシアがいい。いつ空いてる?」
『えーと…』
なぜか気に入ってもらえたようで、それからというもの私のスケジュールはイルミの予約でほとんど埋まった。
しかも毎回通常料金以上のお金をくれた。
でも、今のところ一度も身体は重ねていない。
いつも一緒にお風呂に入って添い寝して、他愛もないおしゃべりをしておしまい。
疑問に思うことはあるけれどイルミが癒されてくれるならそれでいいし、正直自分も心地よくてイルミと会うのが楽しみになっていた。
でも、この日は少し違った。
いつものようにホテルに呼ばれて時間通りに部屋に行くと、中に入った途端に噛みつくようなキスをされた。
ぬるりと強引に入ってきたイルミの舌がシンシアの口内を犯す。
くちゅくちゅ、と唾液の交わる音とざらりとしたイルミの舌の感触が気持ちよくて思わずイルミの首に腕を回して縋りついた。イルミもシンシアの背に腕を回してさらに激しく口付けてきた。
ちゅるっとシンシアの舌先を吸い、唇が離れる。
『…っはぁ…イルミ、急にどうし…っ!?』
言いかけてイルミのその視線に気が付いた。
いつもの何も映さないような真っ黒な瞳ではなく、明らかな熱が宿った目をしていた。
「……」
イルミは何も言わずにシンシアを横抱きにし、少し乱暴にベッドに寝かせるとすぐさま覆いかぶさってきた。
「脱いで」
『え?』
「早くしろ」
言葉もいつもと違って命令するような威圧的な口調。
それでもシンシアは言われた通りに服を脱ぎ始める。
その間もじっと熱の籠った瞳で見つめてくるイルミ。
(何かあったのかな…)
彼の豹変ぶりに驚きつつもシンシアは冷静に言われた通りに動く。今はそうすることがいいだろうと直感が働いたのだ。