第4章 愛と情は紙一重(イルミ)★
だからといって、仕事を辞めるという選択肢は全くなかった。
それに、なぜイルミは仕事をやめろと言うのか。理由がわからない。
『どうして?理由を教えてよ』
「……いてほしい」
『え?聞こえなかった、もう一度言って?』
「ずっとオレのそばにいてほしい」
『!!』
そう告げるイルミの顔は無表情なのに、瞳は切なさを孕んで揺らいでいる。
目を逸らせない。
「シンシアが好きだよ。だからもうオレだけのシンシアになってよ」
縋るような声に胸がぎゅっと締め付けられる。
再び抱き寄せられてシンシアの頭に顔を埋めるイルミ。
「ヒソカのところに、行かないで…」
その声はかすかに震えていて、泣いているんじゃないかと思いそっと抱き返した。
好きだと言われたことよりも、今目の前にいるイルミがとても弱々しいことに驚いて、なんだか自分も泣きそうになった。
『イルミ…』
「シンシア…オレから離れていかないで…そばにいてよ」
子どものように甘えた声で縋りつくイルミ。
シンシアの母性はくすぐられ、ずっと一緒にいて守ってあげたいと思ってしまった。
これはイルミのような“好き“とは違うけれど…それでもそばにいてあげたいと思った。
『いいよイルミ。一緒にいよう、ずっと。』
「本当に?ずっといてくれる?」
『うん!仕事もやめる。イルミのおかげでお金も余裕ができたし。』
「よかった。ありがと、シンシア。好き」
『あ、でもイルミみたいな恋愛の好きとはまだ違うからねっ』
「…は?」
『イルミがかわいいから、なんか母親みたいな気持ち?家族愛が近いかな?』
そう正直に言うと、イルミが深いため息をついた。
そして、改めてシンシアの顔を覗き込んだイルミの目はギラついていた。
『え?イルミ?』
「へぇ…そう、わかった。じゃあこれから覚悟してよね」
『ん?どういうこと?』
「家族愛なんて言ったこと、後悔させてあげるから。絶対オレのこと好きだって言わせる」
『!!イルミさん?キャラ変わってません?』
「シンシアのせいだよ」
そう言ったイルミの口元にはかすかに笑みが浮かんでいた。
≪END≫