第4章 愛と情は紙一重(イルミ)★
(この人急にキスしてくるし、色気すごいし、かわいいし…今日ダメかも…)
この後の展開に思いを馳せていると、
「何考えてるの?」
と身体を引き寄せられて後ろから抱き込まれた。
シンシアのお腹にイルミの腕がまわる。
『…ううん、なんでもない。イルミがかっこいいなぁって思っただけ。』
ごまかすようにそう言うと、お腹に回っていたイルミの腕に少し力が入った。離れないでと言わんばかりの腕の力に心地よさを感じてイルミに背を預けると、うなじや首筋にリップ音を立てながら口付けを落としてきた。
(この人さみしがりやさんなのかな?)
なんとなくそう思ったシンシアは後ろ手にイルミの頭をぽんぽんと撫でた。その行為に少しの間動かなくなった彼だったが、また、ちゅ、ちゅ、と肩や首筋に口付けを再開した。
(…この人いちいちかわいいな。私が癒されるんですけど!)
「ねぇシンシア」
『ん、なぁに?』
「シンシアはどうしてこの仕事してるの?」
『え?うーん…お金が必要、だからかな』
「そうなんだ」
『どうして?』
「……いや、なんでもない」
『??』
イルミはそれ以上何も言わず、私を後ろから抱き寄せたまま静かに湯船に浸かっていた。それ以上触れてくることもせず。
お風呂から出たらソウイウコトをするだろうと思っていたがそれもなかった。
イルミの希望は“添い寝してほしい“だった。
彼曰く、最近仕事が忙しくてほとんど寝られていないからだそうだ。
お客様の希望に答えるのが私の仕事。正直拍子抜けしたが言われた通りイルミと一緒にベッドに入り添い寝をした。
イルミはぎゅっと私を抱き寄せると腰に手を回してきて寝る態勢になった。
(ほんとに寝るんだこの人。)
『イルミ?』
「…ん」
既に眠りかけていたイルミが気怠そうに反応を返す。
『ああ、ごめんね。なんでもない、おやすみ』
「ん…おやすみ」
すぐに頭の上からすーすーと規則正しい寝息が聞こえてきた。本当に眠かったらしい。
(こんなんでいいの?まぁ私はありがたいから構わないんだけど…)
色々と考えてみたものの答えは出ることはなく。久しぶりに訪れた穏やかな夜、シンシアは彼の温もりに甘えるようにたくましい胸に顔を預けて目を閉じた。