第3章 宝物は愛でるためにある(イルミ)
とにかく毎日ありとあらゆる手段でシンシアに近づいた。
なのに彼女は、
『ごめんなさい、受け取れません。』
『その映画、もう観ちゃったんです。』
『ごめんなさい…』
『ごめんなさい、イルミさん。』
ことごとく断ってくれてさ。
そもそも、シンシアは美人でもないし、特別かわいいわけでもないし、スタイルも普通、とにかく全部が普通。
本来ならオレが好きになるはずがないタイプだ。
なのに、あの独特の柔らかい雰囲気に惹かれる。
いっそのこと何かの能力者ならまだよかったのに。
でも、シンシアは念の「ね」の字も知らない一般人だし。
「あーあ、今日も断られた…ちぇっ」
なんか独り言多くなってない?オレ
はぁ…今日はもう帰ろ。
ちょっと自分が情けなくなって肩を落としながら帰ろうとしたとき、声をかけられた。
「お、イルミじゃないか」
「クロロ」
…こいつなら女の落とし方くわしそうだな
聞くのは癪だけど
「ねぇ今ヒマ?ヒマだよね?ちょっと顔貸して」
「ん?なんだ?どこへ行く?」
「いいから」
そう言って無理やりクロロを引っ張って近くの喫茶店に入った。
「……」
「…どうした、イルミ」
「…あのさ、」
「ん?」
「クロロは好きな女が自分に振り向かないときってどうするの?」
「…ほう?珍しいことを聞くな」
こいつ、にやにやしてる。むかつく。聞かなきゃよかった
帰ろうかな
「まぁ待て。…そうだな、状況にもよるが、」
クロロってたまに人の思考読むんだよね、どうなってんの
「…別に、一目惚れして、毎日会いに行って、プレゼント贈ったりデートに誘ったり、好きだって言ったり、普通のことをしただけ」
「…それで、相手の反応は?」
「全然だめ。全部断られた」
「ふむ…まぁそうだろうな」
「えっ何がだめなの?贈り物とかストレートな言葉とか、女は嬉しいんじゃないの?」
「まぁそういう女もいるが…一目惚れってことは初対面だったんだろう?それで次の日から毎日会いに来てアピール…怖くないか?」
「そうなの?」
よくわかんないな…名前だって名乗ったし、シンシアも名前教えてくれたし、何が怖いの?