第2章 綻ぶ蕾
それから十日ほど経ったある日の昼休み、林田は屋上の扉を開けた。
「あっれー。また一人で食ってるのかー?」
からかうように笑いながら桐山の隣に腰を下ろす。
「とはあれからどうだ?」
「特には何も…」
「え?!話とかしてないの?!」
林田は目を見開いて桐山の顔を覗き込む。
「はい…クラスの子と話してることが多いみたいで…」
「あー…あいつは結構クラスに溶け込んでるからなー」
「それって…僕に対しての何というか…」
空を仰ぐ林田を、涙目で見つめる桐山。
「なんだよ!せっかく取り持ってやったのに!話しかけるくらいしろよ!」
「無理に決まってるじゃないですか!逆切れですか先生!」
「うっせぇ桐山!」
林田は、桐山が手にしていた菓子パンに食らいつく。
「何するんですかー」
「仲、良いんだね」
そこに姿を見せたのはだった。
「おぉ!」
「さん…」
「よかった。今日は桐山君、登校してたんだね」
うれしそうに笑うと、桐山の隣に腰を降ろした。
「元々休み多いし、気付くと姿見えないから…」
笑いかけるに、頬を染める桐山。
「なんだぁー桐山君ーに惚れたかー?」
にやりと笑いながら肘で桐山を突く林田。
「な!何言ってるんですか先生ー!」
くすぐったいのと恥ずかしさで、桐山の声が裏返る。
「えぇー別にいいじゃんー」
「よくないですよぉ!」
再びじゃれあう二人を見て、笑う。
「楽しそうでいいね」
「楽しくないってば」
思わず立ち上がる桐山を凝視する。
「あ…えっと…ごめんなさい」
「先生、からかっちゃ可哀相ですよ」
「へーい」
口を尖らしてそっぽ向く林田。
「今日はね、桐山君にお願いがあって来たんだけど…」
「お願い?」
思わぬ話の展開に、林田がちらりと視線を向ける。
「この前、将棋の話がすごくおもしろかったんだけど…」
「え…」
「でも、桐山君が学校にいる日が分からないから…」
話を区切りながら、うつむくに視線が集まる。
「メアドとか…教えてもらえたらな…って」
の言葉に、呆然とする桐山。
林田は、話の意図を察知し桐山の反応に笑いをこらえる。