第2章 綻ぶ蕾
お昼ご飯を食べ終わり、林田が咳払いと共に口を開く。
「、お前を呼び出したのはほかでもない」
厳かに、二人の前に仁王立ちする林田。
「桐山。例の物、持ってきたか?」
「え?あ、はい」
言われて傍らのものを手に取る桐山。
「これ、解いてみろ」
林田を介して冊子を受け取る。
「え?えーっと…」
描かれていた詰め将棋を見つめ、棋譜を呟く。
「次のページのは?」
「えーっと…」
林田に促され、問題を解くをじっと見つめる桐山。
「次は?」
次々と、数十手先の詰め将棋を難なく解く。
桐山は次第に目を見開き、林田に驚きの視線を向ける。
「どうだ!すげーだろ」
自分のことのように、腕組みをしてふんぞり返る林田。
「…え…なんで?前に解いた問題とかじゃ…」
「今初めて見たよ」
「じゃ、じゃあ、これは」
から冊子を受け取り、桐山がページを変える。
「んー…」
少し考えこむ素振りを見せるが、すぐに答えてしまう。
「すごい…」
吐息のように呟くと、桐山は呆然とを見つめた。
「そうなの?プロだったらもっとすごいんじゃないの?」
「えっ…いやー…その…」
桐山は冷や汗をかき視線を泳がせる。
「、これでも桐山はプロ棋士なんだよ」
「これでもってなんですかぁ」
涙ぐんで林田に反論する桐山。
「え?!プロって、たまにテレビに映ってる?あのプロ棋士?!」
「えっと、は、はい…」
はうれしそうに桐山の顔を覗き込む。
「すごい!おじいちゃんが見てるやつだ!」
「お、おじいちゃん?」
「の強さはじいちゃん仕込みらしい」
誇らしげに頷き答える林田。
「へー…でも、本当にすごい…。じゃあ、こういうのは…」
「詰め将棋?」
「いえ、研究っていうか…この手に対してどう対応するかってことを…」
桐山の手元を覗き込み、真剣に話を聞く。
「ふーん…なるほど」
二人で話し合う姿を見て、笑顔で頷く林田。
「…うれしいけど、俺の入る余地、ない…?」
林田の瞳に、涙が滲んだ。