第4章 勉強教えて
下校の放送が流れ、二人は図書室を後にした。
靴を履き替え、校門を出る。
「僕、こっちなんだけど、さんは?」
「私も…」
「じゃ、行こうか」
桐山に促され、歩き出す二人。
胸の高鳴りが治まらないは、桐山と距離を取って歩く。
「今日だけで、随分すすんだね」
「うん…ありがと」
「コツを掴めば、この先も大丈夫だよ」
「うん…」
口数が少ないを気にかけて、桐山は足を止める。
それに気付かないはそのまま歩を進め、段差に足を取られた。
「わっ…」
「あぶない!」
とっさに桐山はの手を掴む。
「あ、ありがと…」
一瞬視線があったが、はすぐにうつむき距離を取ろうとする。
振り払おうとするの手を、桐山は強く握って踏みとどまる。
「さっきから様子が変だけど…どうかした?」
「なんでもないよ?」
視線を逸らして誤魔化す。
桐山はしばらくを見つめていたが、手を離すと背中を向けた。
「そう…なんでもないならいいんだ…」
歩き始めた桐山との距離が開く。
そのまま歩き続ける桐山を見つめると、は駆け寄りシャツの袖を掴んだ。
「ごめん…本当は…」
立ち止まり振り向くと、は耳まで真っ赤になっていた。
「えっと…その…桐山君が…」
「え?僕?」
「さっき、すごく、かっこいいって言うか、男らしくて…」
桐山が顔を赤くして正面を向くと、背中におでこを押し当てる。
「前よりもっと、好きになりました」
思わず背筋を伸ばして硬直する桐山。
背中から伝わるの熱が、全身を覆っていく。
「あ、ありがとう…ございます」
は桐山の手を取ると、愛おしそうに見つめる。
「きれいな手だなって、ずっと思ってた」
桐山の顔はさらに赤くなり、誤魔化すように眼鏡を押し上げる。
「優しくて、かっこよくて…ホント…大好き…」
囁くような言葉は、桐山の耳にしっかり届いていた。
「は、早く帰ろう…暗くなるよ」
視線を逸らしながら、手を引き歩き始める桐山。
はその手を強く握り返し、隣に立って歩いて行った。
~終わり~