第4章 勉強教えて
放課後の図書室で、と桐山は向かい合って座っていた。
教科書とノートを広げ、考えこむ。
桐山は将棋の本を読んでいた。
時折、頭を抱えながらも自力で答えを書き込む。
それでも解けない問題が多く、挫折しかけていた。
「んー…」
しばらく考えこむと、視線を上げて桐山を見つめた。
眼鏡の奥の伏せ目がちの瞳に、本を手にする長く綺麗な指先。
まるで、桐山の周りだけ時が止まったような錯覚に陥る。
微動だにせず、本に視線を落とす桐山。
ゆっくりと瞬きをする桐山を見て、は安心感を覚える。
「…桐山君…ここ、よく分からなくて…」
遠慮がちに声をかけると、しばらくして桐山が視線を上げる。
「あぁ…ここはね…」
身を乗り出し、指先で教科書をなぞる桐山。
図書室のせいか、低く囁く桐山の声がいつになく男らしく感じられる。
無意識に鼓動が早くなり、頬が火照る。
指先から胸元、喉仏から口元に視線を上げた時、桐山と目が合った。
「…て感じで解けると思うんだけど…」
「え?!あ、うん…」
思わず声が裏返り、視線を泳がせうつむく。
「大丈夫?顔、赤いみたいだけど」
「だ、大丈夫!ありがと。あとは自分でやるから」
教科書を読むふりをして顔を隠す。
不思議に思いながらも、桐山は再び手元の本に視線を落とした。