第2章 綻ぶ蕾
「…君、桐山君!どうしたの?大丈夫?」
「え?あ…ごめん…」
に声をかけられ、我に返る桐山。
放課後の教室で日誌を書いていた桐山の目の前で、ひらひらと手を振る。
「本当に大丈夫?最近、よくぼーっとしてる事多いけど…」
前の席に座り、顔を覗き込むをじっと見つめる桐山。
警戒心の欠片も無いの行動に、手にしていたペンを握り締める。
「さんは…好きな人とか、いないんですか…」
静かに囁いた言葉に、は目を見開く。
しばらくして、小さく喉を鳴らして息を呑むと横を向いた。
「いるよ…って言ったら、自分以外を想像する…?」
緊張で強張ったの横顔が、夕日に照らし出される。
「どういう…意味…?」
思わぬ返答に、桐山はを凝視する。
「私のこと、気になるから聞いてくれたのかなと思ったんだけど…」
うつむきながらもちらりと桐山を見ると、きゅっと目を瞑り握り締めた拳が震えている。
「…はい…その通り…です…」
湯気が出そうなほど真っ赤になった桐山が声を振絞る。
「私としては…告白とか…されたいんだけどな…」
椅子の上で膝を抱えると、じっと桐山を見つめる。
「えっと…その…」
可愛らしい仕草に鼓動を跳ね上げる。
期待の眼差しで見つめるに桐山は、瞳を閉じてゆっくりと呼吸をする。
「さんが好きです」
真っ直ぐな桐山の言葉に、は顔を膝にうずめた。
「あれ?だめ…だった?」
「違う…」
慌てる桐山に、そのままの格好で答える。
「一つ年上ってだけなのに、余裕そうで、ずるい」
顔を上げたは、ふてくされたように呟く。
「そんなことないよ。俺もいっぱいいっぱいで…」
腰を浮かせて慌てる桐山を見て、はくすりと笑う。
「私も、桐山君のこと、好き…」
その一言で、桐山の動きが止まる。
の瞳には、緊張とうれしさからか、涙が滲んでいる。
「うん…俺も、さんが好きだ」
夕日が差し込む教室で、二人は笑い合った。