第3章 鳥籠の庭
触られている気配で目を覚ました。
眠っていた私の顔を桃弥さんが撫でていたようだ。
「………ここは、どこですか?」
「お前が行ったこともない遠いとこだよ」
どこかの宿だろうか、見知らぬ和室の布団に寝かされている。
私と桃弥さん以外に人の気配はなく、静かな場所だった。
「………桃弥さん。私、帰りたい」
「それはできない。悪い…こうするしかないんだ」
桃弥さんが私に覆いかぶさる。
抵抗しないのは、こんなことをしても無駄だとわかっているから。
私はあの人からは逃げられない。
「桃弥さんも、一緒に帰ろう?」
「!アイツはここにはいない!これからは俺と暮らすんだ!嫌でも無理矢理連れてく、今度こそ俺がお前を守ってやるから ─── 」
今にも泣きそうな桃弥さんに、そっと口付けをする。
──あの子もまた君しか愛せないんだよ
前に言った杏壱さんの言葉の意味がわかったような気がした。
私と桃弥さんは同じ。
捕らわれて、逃げることができない。
「こんなこと、杏壱さんが許してくれない。今ならまだ間に合うから一緒に帰ろう、ね?」
「、なんで……」
「私は杏壱さんと桃弥さんの三人で幸せになりたいの」
いつまでもこうしてはいられない。
あの人が帰ってくるまでに家に戻らないと…。
どうにか桃弥さんにもわかって欲しくて、抱き締めていると足音がすると共にガラリと障子の戸が開いた。