第3章 鳥籠の庭
その日、杏壱さんは出かけていて帰るのは明日の夕方になると聞いていた。
杏壱さんが泊まりで出かけるのは珍しい。
留守を預かり、いつものように屋敷の掃除をして庭の花の手入れをしていると突然、口元に何か妙な香りのする手巾を押し当てられ、段々と意識が薄れていく。
「、すまない。お前の為なんだ……」
遠くなる意識の中で、桃弥さんの声が聞こえたような気がした。
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眠っている間に夢を見た。
桃弥さんと一緒に過ごした子供のころの夢。
一人っ子の私にとって桃弥さんは本当の兄のようで、いつも後をついて遊んでもらっていた。
優しくて、弱い私を守ってくれた。
『あのね、ね』
物心がついたばかりの幼い私が満面の笑みを向ける。
『大きくなったら、桃弥お兄ちゃんとけっこんするの!』
もうとっくに忘れ去られた。
子供の頃の夢。