第2章 少女の頃
息を整えた頃にが言う。
「桃弥お兄ちゃん……逃げて大丈夫だったのかな、私ちゃんと謝ってないわ」
俺は時々、のこういう純粋すぎるところに腹が立つ。
「バカか!お前、俺がいないと今頃アイツに犯されてたぞ!」
「え…でも私、十四よ?お祭りに参加できるのは十八になってからでしょ?」
「んなことは関係ねぇんだよ!祭りじゃなかったとしても男に簡単に着いていこうとするな!嫁に行けなくなってもいいのか!?」
俺が怒鳴ったせいで、が泣きそうなりながら下を向いた。
それを見て俺もしまったと思い、の頭を優しく撫でる。
「お前は可愛いんだから気をつけろよ。俺がいつでも守ってやれるわけじゃねぇから、な?」
「うん…ごめんなさい……」
しばらくして帰ろうとするとひどい通り雨になり、社の中に入って雨が止むまで過ごすしかなかった。
「………私のせいで、ごめんなさい」
「もう謝るな。は悪くねぇよ」
しゅんとして膝を抱くの肩が、少し震えていることに気付く。
「……寒いなら、こっち来るか?」
は立ち上がると、何も言わずに俺の隣に座り肩に頭を預けた。
それも俺を男として見ていないからだと思うと、胸が苦しくなる。
いつでもは、細くて小さくて、お人好しで、危なっかしい。
ずっと傍にいて、守ってやりたくなる。
「俺、お前のこと好きなんだよ………」
いつの間にか眠っているを抱き締めて、切ないため息を漏らした。
もし結婚相手が自分だったら……
そんな淡い期待を抱きながら雨が止むのを待った。