第2章 少女の頃
◇桃弥視点
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媚薬を盛られ半ば強引にを抱いた後、我に返った俺は家を飛び出した。
憎き父親にそそのかされた惨めで、屈辱的な行為。
相手がだから、余計辛くなる。
肌寒い夜道で、過去の記憶が頭をよぎる。
あれは今日と同じ祭りの日だった。
十四だったがどうしても祭りの催しを見てみたいと言ったので一緒に出店を回っていた。
「次はどこに行きたいんだ?」
「んーっと…金魚すくい!早く行こ!桃弥お兄ちゃん!」
そう言っては俺の手を引く。
『桃弥お兄ちゃん』あの頃のは俺をそう呼んで、本当の兄のように懐いてくれていた。
はこの村を一度も出たことがなく、親に目に入れても痛くないほど大切に育てられ、人を疑うことを知らない。
「は村から出たいと思わないのか?」
ほとんどの村の子供は十六になると自ら村を出ていくというのには全くそういった素振りがない。
問いかけには一瞬、目を丸くした後当然のように答えた。
「そんなこと考えたことないよ。それに、あのね……」
そう言って恥ずかしそうにクスクスと笑い、俺の耳元に手を当てて囁いた。