第1章 祭りの夜
「……どうしました?そんなに見つめて」
「あぁ、いや……今日もは可愛いなと思ってね」
「ふふ。いやだわ杏壱さんたら」
いつもより感慨深く見つめてくる夫に、少し不思議に思ったけれど軽く流されてしまった。
「今日は桃弥も帰ってくるそうだよ」
「桃弥さんが?珍しいですね」
「4年ぶりくらいかな。あの子はこの村が嫌いだからね」
桃弥さんとは、杏壱さんと離縁した前の奥様との子で歳は私の二つ上だ。子供の頃はよく遊んでくれていたけど大学院を卒業してからは滅多に村に帰って来なくなった。
そんなことを話していると、中庭から桃弥さんが門をくぐる姿が見えた。