第1章 祭りの夜
「桃弥さん、おかえりなさいませ」
「ただいま、元気だったか?」
「はい。お陰様で元気にしております」
「それは良かった」
すっかり大人の男性となった桃弥さんを見て少し驚いてしまった。父親である杏壱さんとはまた違う若くてどこか色気のある美青年になっていた。
「久しぶりだね。桃弥」
「……ご無沙汰してます」
玄関で出迎えていた私の後ろから、杏壱さんが顔をだすと、穏やかだった桃弥さんの表情に一瞬陰りが見えた。
「もしかして、お前も祭りに参加する気になったのかな?」
「まさか。こんな下劣な風習、見るだけでも吐き気がしますよ」
「そんなことを言ってはいけないよ。この祭りは村の繁栄に必要な大切な行事だからね」
「なら、にも参加させたらどうです?まだ二人に子はいないのでしょう?」
その言葉にピンと空気が張り詰めたのを感じた。
私から見て杏壱さんと桃弥さんの仲はあまり良いとは言えない。
というより、杏壱さんは可愛がっているけれど、桃弥さんが一方的に杏壱さんを嫌っているように感じる。