第1章 祭りの夜
「、これからここに桃弥が来る。嫌でも大人しく抱かれなさい」
「えっ…ゃ…杏壱さん、そんな」
「私のことを愛してるなら言うことを聞けるね?」
先程までの甘い時間が嘘のように、身体がひやりとして身を起こそうとしたけれど、縄で縛られていて動けない。
「もし出来ないのなら私は妾を作るか、離縁して妻を摂るしかないけれど、はそれでもいいのかい?」
「っ、それは……それだけは嫌です!杏壱さんが他の女の人に触るのも触られるのも嫌!杏壱さんと離縁するくらいなら、私…生きていたくありません!」
どちらも考えただけで、心の芯まで凍りついてしまいそうだった。
「お願いします…私を捨てないで……なんでも、言うこと聞きます。いい子にしますから、そんな悲しいこと、言わないでください……」
「ああ、私だってそうはしたくないんだ。君ほど一途で愛らしい妻は他にいないからね。簡単に手放したくはないんだよ。けれど、三久利の血を絶やすことも出来ない……わかってくれるね?」
まるで死刑を宣告された気分だ。
杏壱さんの為だけに誠心誠意尽くしてきた。
彼のいない人生なんて、死んだも同じだった。