第1章 新入生
伏黒side
本当だったらこれくらいの怪我
全然我慢できる
それでも保健室にやってきたのはさんに会いたかったからだ
小さくノックをして中に入るけれども保健室の中はシンとしている
「寝てんのか‥?」
カーテンをゆっくりと開けるとベッドで横になるさんの姿
呪術師も任務ばかりで激務だが
反転術式が使えるさんはそれこそ貴重な存在で寝る暇もなく働いている事もよくあった
柔らかそうな艶のある猫っ毛をゆっくりと撫でる
目の下にはうっすらとクマがある
「昨日の夜も眠れなかったのか‥」
すやすやと眠るさんをみていると手首に何かで縛られたような痕がある事に気付く
誰がこんな事をしたのかは想像がつく
湧き上がる嫉妬心を掻き消す為に眠っているさんに声を掛ける
俺が怪我しているのが分かると大きな目を見開いて慌ててベッドから降りようとするから落ちそうになって焦った‥
この人‥本当に人を助けるばっかりで
自分の扱いは雑っていうか‥後回しって言うか‥
いつか簡単にやられるんじゃないかと怖くて堪らなかったりする
俺の制服をさんがゆっくりと脱がしていく
治療の為の行為だってのは頭では分かってるのに
心臓が馬鹿みたいにドキドキする
『痛かったね‥ちょっと待ってね‥』
優しい声でそう言うと怪我をした俺の身体にそっと近付く
さんの術式は
相手におでこで触れないと発動しない
触れたところがポカポカとまるで太陽に照らされたかのように温かくなって
痛みがすーっと消えていく
本当に‥太陽みたいに温かく俺達を照らしてくれるさんにぴったりの術式だと思った
ぺこりと謝るといつもの可愛い笑顔で俺の頭をふわふわと撫でる
またチクリと痛む胸
「‥そうやってさんはいつまでも俺の事子供扱いするんですね‥」
いつもこうだ
俺をみるさんの目は異性を見る目じゃない
俺は
一目見た時からずっとさんの事を愛しているのに
五条先生と夏油先生の最強コンビに付け入る隙がなかなかなかったから伝えられずにいた