第2章 懇願
少し批難するような視線を向けたがそれ以上に怒気を孕んだ視線を向けられ光莉はスッと目を逸らした。
勝てない、これは勝てない。大人しく謝っておこう…。
「スミマセンでした…」
床にぶつけた鼻をおさえつつ謝った光莉に一は溜息をつくと靴を脱いでリビングへ向かって行った。どうしたものか、と悩んでいた光莉の背中に「とにかく入れば」と促してくれた一はこの日の光莉にとって神に思えた。
部屋に入ってみると、黒を基調としたモノトーンスタイルで冷たいイメージはピッタリだと感じる。それにしても見た目若そうなのにこんなマンションに住めるなんてどんな仕事をしているんだろうか。というかそもそも年齢いくつなんだろう。
「で、光莉だっけ?アンタ何がしたいの?」
キッチンカウンターから漂うコーヒーの香り、外は寒かったけど部屋は広いのに暖かい。
とりあえず今日はここのソファでもいいから借りれないかな。暖かい部屋で眠れるって幸せな事なんだなぁと改めて思う。
「…おい…おい!聞いてんの!?」
「ハッ!ご、ごめんなさい。暖かくてつい…何でした?」
お前本気か?とでも言いそうな剣幕の一に光莉は気付いた。
このままでは追い出される!!
「何がしたいの?」
「何が…と言うと、今日泊めてください。なんなら暫く居候させてください、って交渉ですかね」
「…お前馬鹿なの?」
ちょっと引き気味の一に我ながら「そりゃそういう反応になるよねー」と心中で突っ込む。自分が相手の立場でも同じことを思うだろう。
コイツ、俺の何かを狙って声かけたわけじゃなさそうだよな…。いや、まだ確定はできねぇか。
ジッと探るような視線を受ける光莉は居心地が悪くなり口を開く。
「その…事情がありまして、家なき子と言いますか…野宿かな~ってところなんで、拾ってくれないかなぁと」
「親くらい居ンだろ、家帰れよ」
「…家も無いので。物理的に帰れないという状況ですね。野宿か日雇いか、風俗かと悩んでいたところで貴方が現れたのでつい…というか名前聞いてもいいですか?」
親については否定せず、でも家は無い?どういう状況なんだ?
「…一(はじめ)。なんでそんな状況なんだよ意味分かんねぇ」
「はじめ?…私も今日放り出されたばっかりで良く分かんないんですよね」