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【東リベ】捨てられた猫【九井一】

第7章 エピローグ



確かに危ないことは危ない。それはお腹が大きくなればなるほど感じることだった、お腹の張り出しで足元が見えないから階段はかなり慎重に昇り降りしなければならない。つくづくエレベーターのあるマンションで良かったと実感している。

付き合うことになったあの日、無責任と言えば返答のしようも無いことだがお互いに避妊ということを考えもしなかった。否、正しく言えば最初はきちんと避妊をした。となれば...とお風呂での行為に思い当たるのは早かった。

「会長、それは私が...」

秘書が一を追ってキッチンへと消えていく。
食器の触れ合う音を聴きながら光莉はウトウトと目を閉じる。
お腹が大きくなるにつれて、過保護じゃないか、と思うほど一は光莉の世話を焼くようになった。その姿がなんだか面白くて心地よい。

結婚、出産、子育て。
全てが初めてで不安は大きい、けれど一が傍にいてくれればきっと二人でなんとかしていけると感じている。
漠然としているけど直感は信じられる、だって最初の出会いの直感に間違いは無かったのだから。

拾って下さい!

一に向かって言い放った言葉は今思い返しても苦笑いモノだが、あの発端がなければこの幸せは無かった。

「幸せ、だなぁ」

ポツリと呟いた言葉は小さかった。ふと漏れた言葉に返答したのは小さな小さな命。お腹がポコリと蹴られる感覚に光莉は更に幸せを感じ、優しくお腹を撫でた。


fin.
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