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【東リベ】捨てられた猫【九井一】

第4章 誤解と嫉妬



いつも利用している業者で、顧客管理をしっかりしていると定評のある会社のため誰が来るのかなど気にしたことが無かった一は、メールに表示された苗字を確認すると慌てて車を降りる。向かうは自分の部屋だ。

その突然の行動にも秘書は表情を変えずに後ろをついて行く。秘書には実際はこの行動の予想がついていたのかもしれない。一が利益を度外視してでも探す人間、それはとても珍しいことだったのだ。


「さっきの女性、もしかして九井様の奥様とかかな」

「はじ...九井様は結婚されてるの?」

部屋を掃除しつつ、リビングを片付ける同僚に問いかける。結婚していたのならば自分がここで居候していたこと自体大問題だ、けれど奥さんがいるような素振りもなければ恋人的な影もなかった。光莉は無機質な部屋を見回すが、あの時から特に変わった部分は無さそうだ。

本当に仕事ばかりなんだろうな。寝に帰って来てるだけ、みたいで生活感が無い部屋。

「んー、結婚してないって公言してるけど実際分かんないよね」

公言?結婚って公言するものなの?
光莉は同僚の発言に首を傾げる。

「雑誌とかで独身だって言ってるけど、あの顔だしお金持ちだから愛人の一人や二人くらい...」

ピー、という電子音とともに扉が開き同僚は「やばっ」と慌てて言葉を飲み込んだ。
部屋の片付けをしていた光莉は先程の女性が忘れ物を取りに戻ってきたのかと思い部屋から顔を出すと玄関からリビングに入ってきた人物と目が合う。

「ひぇっ!」

目が合った瞬間、真っ直ぐとこちらに向かってくる一に光莉は思わず短い悲鳴を上げた。一の必死な形相は猫目が更にキツくなり怖いのだ。

「お前っ!今までどこに...」

「会長。女性に掴みかかるのはいけません」

腕を強い力で掴まれ光莉は痛みに顔を歪める。ピシャリと響いた女性の声に一はピタリと動きを止めたが腕を離す気配はない。

「どこに、って...別にどこでもいいでしょ。一が出ていけって言ったのにどうして聞くの?関係ないでしょ」

女性の視線に光莉は慌てて腕を振り払うと一がハッとしたように「悪い」と小さく謝った。

「あの、奥様の前でこういう行動は誤解を招くのでやめてください」

「は?」

「え?」

妻の前でほかの女の心配をするなんて一体何を考えているのか。
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