第6章 静かな兆しから
「メンじぃ、隣のおばあさんからお届け物だよ〜」
メンじぃのいつも開けっ放しの玄関からそう呼び掛ける。返事はなかった。
「おや、裏山にでも行ったかねぇ」
とおばあさんは言ったが、返事がない時は大体、離れか物置にいるもんだと知っていたので、あとは僕がメンじぃに伝えとくねと言ってお裾分けの野菜を台車から下ろした。
それから僕はおばあさんをお見送りしてすぐにメンじぃを探しに離れに向かっている途中、物音がして足を止めた。
「メンじぃ……?」
僕は何か嫌な予感がして、物音がした離れの方へ駆けつけた。
「こっち来たらダメだ!」
メンじぃの声がし、僕は心臓が跳ねた。僕はもう離れの出入口を開けていて、そこには手頃な農具を持って構えているメンじぃと、奥に大きくて黒い何かがいるのが見えていた。
蜘蛛だ。
僕は咄嗟にそう思った。その時急に大蜘蛛の社に近付いたことを思い出した。僕のせいで悪いことが起きたんだと悟った。