第3章 田舎のメンじぃ
僕は夏休みに入ると、田舎にいるメンじぃのところに遊びに行っている。
今年もメンじぃの家に遊びに来たから、いつも開けっ放しの玄関からおじいちゃんを呼ぶと、作業服のメンじぃが笑って出迎えてくれる。後ろで両親が「お願いします」と話しているのもよく聞かないで、僕は急いで祖父の家に上がった。
メンじぃのお家は農家の家だから、いつも面白いものが置いてあって、僕は毎年家中を探検するのが好きだった。
もう使わなくなった農具がある倉庫。去年僕用にメンじぃが作り替えてくれたそれは戦いごっこ用の武器になっていた。僕はそれを持ち出して早速外へ遊びに行く。といっても、都会みたいに遊ぶ場所が決まっている訳でも、公園がある訳でもなかったので、僕の遊び場はいつもあちこちにあった。
その日は裏山へと出掛けて行った。メンじぃからは、大きな蜘蛛がいるから近付くなと言われていたのだが、行くなと言われると行きたくなるのが子ども心だった。それに僕は自分用の武器があったから、気が大きくなっていたのだ。
そうして裏山へ入って行くと、周りはあっという間に暗くなって深い森になり、僕はなんだか心細くなってきた。本当にメンじぃの言っていた通り大蜘蛛が出てくるんじゃないかと思ってきた。引き返そうかな、なんて思った矢先、ぱっと目の前が開けて僕は呆気に取られた。
そこには、小さな小屋みたいなものが建っていたのである。周りの木もその小屋を避けるように生えていて、子どもながらまるで神々しく見えたのだ。
小屋といっても、人が入れるような大きさではなく、僕はそれがなんなのか分からずに近付いた途端、強い風が背中から吹いた。僕はその風に押されるように小さな小屋みたいなものの中を覗き込んだが真っ暗で、奥で鏡みたいなものがきらりと光った以外は何も分からなかった。
「おーい、おーい」
直後、メンじぃの声が聞こえて僕は振り向いた。僕を探している声だった。こっちだよ、と走りかけて振り返った時にはすでにそこに小屋のようなものは跡形もなく、僕はぞっとした。怖くなって走り出したら、間もなくメンじぃが視界に見えて僕は一直線にそこへ飛び込んだ。