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あの日見た紫の思い出

第14章 新しい魔法


「じゃあ、今から新しい魔法を覚えたら……!」
 僕は諦めずにそう言ったが、お兄さんは首を振るばかりだった。
「そもそも、どうやって覚えるのかも分かんないんだよね。俺は元々、あの紫玉と魔法陣と、鏡とお喋りする魔法しかないし……」
「じゃあ、あの時大蜘蛛を吹き飛ばした魔法は?」
「ああ、そういえば」お兄さんが顔を上げる。「適当に言ったら出来たんだよな。確か英語で、なんとかって意味の……」
「きっとそれだよ! 英語で呪文なんだ!」
 僕は割と真剣だったのだが、よくよく考えれば僕だって適当なことばかり言ってる生意気な子どもだった。だがお兄さんは僕の言葉を否定せず、にこりと微笑んだ。
「そうだな! やってみっか!」
 途端にやる気になったお兄さんは、確かな希望を感じたからというよりは、楽しそうな雰囲気だった。僕もなんだか楽しくなって一緒に頷くと、お兄さんはまた笑ってくれた。
「僕も魔法みたいな呪文言ってみるよ!」
 お兄さんを助けたいという一心で言ったことだったが、それでこの火が消えて大蜘蛛も、この社も守れるならなんでもいいと思った。
「えーっと、火を消したいから……火よ、消えろ! 火事を消して! 山火事消えろ!」
 僕は思いつく限りの言葉を言い続けた。こんな言葉が魔法になるのか僕には分からなかったけど、お兄さんもよく知らない言葉を色々と言っていたから、僕と同じで思いつく限りの言葉を唱えていたんだと思う。
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