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あの日見た紫の思い出

第13章 それはあっという間に


 その提灯の明かりはどんどん大きくなり、やはり大蜘蛛の社へと近付いていた。だが、昼間見たメン少年とは違う別の少年で、何かぶつぶつと呟いていた。
「メンのやつ許さねぇ。リンはオレのもんだってのに!」
 そう言う少年は明らかに怒っている様子で、大きく足音を立てながら大蜘蛛の社の目の前までやって来た。この時僕はなんのことかよく分からなかったけど、お兄さんが一言「男女のもつれか」と言っているのが聞こえて、多分マズイ状況だということはなんとなく分かった。
「ここだな……あいつらの大事な場所ってのは」と少年が独り言を言う。「ここを壊せばきっと……」
「この人を止めなきゃ!」
 僕は叫んだ。きっとこの人が、大蜘蛛の社を燃やした人だ、と思いながら。
「だけどどうやって止めるよ……?」
 と静かに言い放ったお兄さんは、焦りの気持ちが顔に表れていた。僕も考えたが、実際そこにいる少年の肩にも触れないし、声も聞こえていないみたいだったから何も思いつかなかった。
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