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あの日見た紫の思い出

第9章 大蜘蛛の社へ


「ここで何をするの……?」
 僕はさらに質問をした。だがお兄さんは、その辺りをウロウロと歩き始めるだけで、ちょっと待ってね、しか言わない。
 僕はだんだん不安になってきて、早くメンじぃの家に帰りたくなってきていた。
「ねぇ、お兄さん……」
「よしっ、出来た!」
「え」
 言いかけた時、お兄さんがそう言って僕の隣に戻ってきた。
 僕は最初なんのことか分からなかったのだが、地面が紫色に光ってようやく理解した。お兄さんは先程まで地面に魔法陣を描いていたのだ。
「これって……」
「そ、魔法陣。大蜘蛛の社に入るためのね」
 大蜘蛛の社の中?
 あんな小さな小屋に入れる訳がない、と僕が言うより早く魔法陣はさらに輝きを増し、目を開けていられなくなって瞼を腕で覆った。
 やがて目が慣れてきて恐る恐る腕を下ろすと、僕とお兄さんは大蜘蛛の社を含めて魔法陣の中の光にすっぽり包まれていた。
 僕が言葉を失っていると、お兄さんは繕うようにこう話した。
「今から自分たちの体を小さくしてここに入るんだ。さぁ、早くこっちに来て」
 僕を招くように腕を広げたお兄さん。僕はお兄さんの言葉通りに従ったが、不安は拭いきれなかった。
「ちゃんとお家に帰れる?」
「帰れる帰れる。俺も行くからね」
「……分かった」
 僕はお兄さんと並んで大蜘蛛の社の前に立った。するとお兄さんが何か呪文のようなものを唱えたが、なんて言ったのかは聞き取れなかった。
 やがて目の前の景色がどんどん大きくなっていった。見ればお兄さんが小さくなってる! と気付いた時に僕も自覚した。
 景色が大きくなったんじゃなくて、僕が小さくなったんだ!
 また見たこともない魔法にどこかワクワクさを感じながら、僕とお兄さんは神社のような見た目をした大蜘蛛の社の前に立っていた。
「さぁ、行こうか」
 お兄さんが僕に手を伸ばしてきた。サングラスを掛けているお兄さんから、はっきりとした表情は伺いづらいが、僕はなぜか信じられるような気がしていた。
「うん」
 僕はお兄さんの手を取って、一緒に大蜘蛛の社へ踏み込んだ……。
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