第12章 消失 × 現実
どうしよう…
イルミに自分のことを話して受け入れてもらえる?
ネーロのものになるって、つまりそういうことだよね…
でも、もう一度イルミに会いたい…
『契約します…』
「そう…わかったよ。」
少し寂しそうにネーロが了承すれば、そのまま唇が重ねられた。
『ん…』
イルミとは違う、温かい唇だった。何故か心地よくて拒否することも忘れて、それを受け入れていた。
ちゅ
長めのキスの後、小さなリップ音と共に唇が離れた。
「はい、これで契約成立ね。」
『えっと…?』
「今ので僕の力を君に少し分けたから、次あの世界に行ったときは少しは何とかなると思うよ。サクラのために特別だよ?」
ネーロの先ほどの寂しそうな声はどこかに消え、にっこりと微笑みながらそう言った。
「あ、それから。」
『まだ何かあるんですか?』
「ま、これは問題ないと思うけど。次あの世界に行ったら、何があっても二度とこの世界には戻れないよ。」
『え、さっきは戻すことは簡単って言いましたよね?』
「そうだけど、この契約をした場合はそれもできなくなるんだ。」
え、それ言うの遅くない!?
そう思ったものの特に問題はなかった。孤独なこの世界に未練はない。学校に友人はいるがそれも上辺だけのものだった。
『わかりました。』
「オッケー!じゃあもう行く?」
『はい!』
「あ、敬語じゃなくていいよ?ちなみに僕はこの姿で一緒についていくね。」
ボン!とまた音を立てたかと思えば、小さな黒猫の姿に戻ったネーロは、にゃあと鳴いて見せた。