第19章 無自覚 × 集結 × 捕獲 ★
しばらくして目を薄っすら開けると、どうやら競売品と一緒に解放されたようだった。幸い、物陰に隠されて梟には見つからなかったようだ。
『出られたぁ…よかった…』
「サクラ、怪我はない?」
『うん、平気!』
「とりあえず外に出よう」
今いる場所は金庫ではなくどこかの部屋のようでドアが1つ。窓はない。ドアノブを回してみるが当然カギがかかっていて開かない。
『壊す?』
「いや、できれば音は立てたくない」
『じゃあどうしよっか…』
「カギ開けるよ」
そう言ってイルミはおもむろに針を取り出すと、そのままかちゃかちゃと鍵穴を針で弄る。
『え、イルミ、そんなこともできるの?』
「まぁ仕事上、必要な時もあるから」
(…そういえば、私の家にも普通に侵入してきたっけ。)
そんなことを思い出して納得した。
「…開いた。行くよ」
イルミは造作もなくカギを開け、周囲を警戒しながらドアを開ける。辺りはしんと静まり返っていて人の気配はなかった。
『誰もいないみたい?』
「うん、気配がない」
その通り、誰にも出くわすことなく2人は外へと出ることができたのだった。
「…サクラ、もう帰ろうよ」
『え?』
「…ずっと嫌な予感がしてる。これ以上サクラを危険な目に遭わせたくない」
『…イルミ、ごめんね。それでも私は』
「どうして?団員のやつらが死んだって関係ないだろ?オレはサクラが無事ならそれでいい」
『うん、そう、そうだねイルミ…』
「じゃあ帰ろう」
『…ごめんね、まだ帰れない。私の我が儘なのはわかってるの。それでもね、助けたい。だからお願いイルミ…ね?』
「……」
『何があってもイルミが守ってくれるんでしょう?』
「…本当にずるいね、サクラは」
『…ふふ、ごめんね?』
「…ああもう、わかったよ。サクラの気が済むまで付き合う」
『ありがと、イルミ。だいすき。』
私が我を通せばイルミは断れないことを知ってる。ずるいよね。でもどうしても諦められない。ウヴォーもパクも、それから………
みんな、誰一人死なせない。