第10章 ハンター試験③
「なんで殺せない?」
わからない。
自分から突き放したはずなのに、サクラの顔ばかりが浮かんでくる。
「サクラ…」
彼女の名前を呟けば、喉の奥が詰まるような、胸の中が締め付けられるような感覚。
「ああもうやだ」
どうしてこんなに苦しいの?
自分が自分でなくなるような、こんな煩わしい思いしたくないのに。
ダンッ!!
持て余した感情を処理しきれずに目の前の壁を殴りつけ、シャワールームを後にした。
「皆様大変お待たせいたしました。目的地に到着です。」
予定よりも少し遅れて到着した場所は三次試験会場。トリックタワーと呼ばれる高い塔の上だった。
72時間以内に下まで降りれば合格だという。
しかし
『うーん…どこをどう見ても入口なんかないよね。』
ぐるりと見渡しても見えるのは綺麗な景色だけ。
『トリックタワーっていうくらいだから何か仕掛けがあるのかな…』
サクラはぶつぶつ言いながら歩き回っていると、
カタッ…
『ん?なんか音が…』
足元を見ると、踏み込んだところが少し沈んでいた。
(これはもしや、ラッキーなのでは!?)
辺りをキョロキョロと見渡して、他の受験生が見てないことを確認。
そして
『えいっ!』
降りたときの高さなど考えるわけもなく、見つけた隠し扉に飛び込んだ。
どさっ
「いっ!たぁ…」
幸いそれほど高さがなく、お尻から落下したサクラは強めにお尻を打っただけで済んだ。
『痛ーい…』
「その声はサクラかい?」
『え、まさか…』
「クックック◆楽しくなりそうだ◆」
(ヒソカーっ!!)
「この部屋、二人揃わないと先に進めなかったんだ★パートナーがサクラでよかったよ◆」
『う、うん…』
「元気がないね◆どうしたんだい?」
『…またイルミと喧嘩しちゃった。今度はもう仲直りできなさそう』
「キミのご主人様は怒ってばかりだねぇ◆」
『ううん、私がいけないの。私がイルミを怒らせちゃったから。』
すんすんと泣き出したサクラ。その泣き顔に欲情したヒソカはぺろりと舌なめずりをする。
(ああキミはなんて…★でもまだまだ◆もう少し我慢しなくちゃね◆)
「イルミと仲直りしたいかい?」