第10章 ハンター試験③
『あれは!ヒソカが勝手に…』
「うん、そうだろうね。でもさ、サクラ」
ちゅっ
『っ!?』
「ほら。ちょっと隙がありすぎるんじゃない?それともヒソカにもしてもらいたかった?」
『ちが…っ!でも』
ダメ、これは言っちゃダメだ。
「でも、何?」
ダメ…!!
『私が…っ、私が誰と仲良くしようと、イルミには関係ないじゃない…っ!』
言ってしまった。
イルミが固まったのがわかる。
そして、ものすごく寂しそうな表情を見せたあと。彼の表情のない顔が、更に無表情になった。
「…サクラ、分を弁えろ。お前はオレの言うことを聞いてただ側にいればいい」
『…いや。』
「サクラ、反論は許さない」
『…っやだ!』
「……」
イルミからの威圧がどんどん大きくなる。その場にいるだけで気を失いそうなくらいの強い殺気。
殺されると思った。
なのに、
「…わかった、もういいよ。サクラは好きなことをすればいい。でももう助けない」
そう言って殺気はそのままに離れていくイルミの声は、少し震えていた。
───────
あのあとふらふらと空き部屋に入り、ベッドにうずくまっていたサクラ。
『私の馬鹿…』
”関係ない”なんて言ったらイルミが怒るのはわかりきっていた。
危ないときにいつも助けてくれるのはイルミなのに。
イルミがいなかったら自分は何もできないのに。
”もう助けない”
『ひとりぼっちになっちゃった』
本当に馬鹿だ。でも後悔しても遅い。自業自得。
『ごめんねイルミ。ごめんなさい…』
何度も謝りながら、サクラはいつの間にか眠りに就いていた。
───────
「はぁ…」
シャワーを浴びながら盛大なため息をつくイルミ。
「なんで思い通りにならないの…」
キルもサクラも。
こんな気持ちになるくらいなら、サクラなんて早く殺してしまえばよかった。
彼女はただの人間。殺すなんて簡単なはずなのに。
さっきだって殺せる隙はいくらでもあった。