第8章 ハンター試験②
先程のひと悶着の騒動でヒソカの変態さを再認識し、一次試験がまたスタートした。
『また走るのかぁ…』
「サクラ」
『なぁに?抱っこならしなーい。』
「……違う。周り見て」
『えー?…ぅわっ!?』
イルミに促されて見渡せば、辺りはいつの間にか真っ白になっていた。
『何これ、霧?』
「みたいだね。サクラこっちきて」
『うん、ってイル…じゃなくてギタラクルどこ!?』
霧が濃くなりすぎて、隣にいたはずのギタラクルさえ見えなくなっていた。
やばい、はぐれた!とサクラは焦り、目を凝らしてギタラクルの姿を探す。
が、深い霧の中で見つけられるはずもなかった。
あちこちから悲鳴が聞こえる。
誰かが”騙されてる”ということなのか。
(イルミは心配ないけど…)
自分が騙されちゃいけないと、サクラは走るのをやめて霧が晴れるのを待つことにした。
「ってえーーーー!!!」
一際大きな叫び声が聞こえた。
(近い…!)
ゆっくり、その叫び声が聞こえてきた方に進むと、
シャーーー…
何かの音が聞こえてきた。と、同時に
「てめェ!!何をしやがる!!」
先ほどの叫び声の主らしき男の声。
「くくく◆試験官ごっこ★」
(ヒッヒソカァァァ!?)
「二次試験くらいまではおとなしくしてようかとも思ったけど」
シャーーー…という音は彼愛用のトランプを切っている音のようだ。周りには恐らく人が倒れていると思われるが霧のせいでよく見えない。
「一次試験があまりにタルいんでさ★選考作業を手伝ってやろうと思ってね◆ボクが君達を判定してやるよ◆」
そう言ったヒソカの雰囲気が少し変わったのがわかる。
(ヒソカ、殺す気だ…)
怖くなり、息を潜めて動くのをやめたサクラ。微かに見えるヒソカの影を目だけで追う。
「…と、その前に◆」
(え?)
サクラが気付いたときにはもう遅かった。目で追っていたはずのヒソカの影が消えたのだ。
「何してるんだい、こんなところで◆」
『…っ!?』
次にヒソカの声が聞こえてきたのは自分の耳元からだった。恐怖のあまり声が出ない。身体も動かせず、金縛りにあったような感覚。
(い、つの間に後ろに…)
思考もままならない。