第8章 ハンター試験②
イルミとサクラはあっという間に集団に追い付いた。
自分を抱えて走ってるというのに、汗ひとつかかずに颯爽と走るイルミにときめいていたサクラ。
ただ…
その速さが尋常じゃなかった。
ときめいたからといって甘い雰囲気に包まれるわけもなく。ただただ、必死な形相でイルミにしがみつくしかなかった。
時々、
「髪ひっぱらないで」
と冷静な苦情を受けながら。
―――――
追い付いたところでサクラはおろしてもらい、イルミと並走していた。
「別に無理に走らなくてもいいのに」
『無理してないから大丈夫!走りたいの!』
「…ふーん」
本当は姫抱きされていることで周りの視線が集まるのが嫌だったからなのだが。
「出口だ!」
誰かが叫んだ。その声につられて前方を見れば、遠くから射す光が見えた。
『やっと外だ!嬉しい!』
走っても走っても岩壁が続く景色に飽きていたサクラに笑顔が戻った。
長い階段を上って出た先は広い湿原。前で、ヒゲのおじさまが何やら説明している。
どうやらこの湿原は【詐欺師の塒】という通り名があり、騙されると死ぬらしい。
『やだよもう、死ぬとか怖いよ!』
「またオレが連れてこうか?」
『え…』
イルミはなぜそんなに抱っこしたがるのか。キス魔な上に変態なのか。
「…サクラ、今失礼なこと考えてない?」
『いいえ?』
「すぐ顔に出るよね、サクラって」
『…うっ』
「オレにちゃんとついてくれば死ぬことはないよ」
『死ぬことはないけどなんかはあるの!?』
「さぁ」
(さぁ、って…)
そんなやりとりをしてる内に別のところでひと悶着あったようだが、ヒソカが投げたトランプで呆気なく片付いた。
サクラはイルミに、見るなと目を覆われたため何があったかわかっていないが。
『イルミ、ありがとう。』
「倒れられたら面倒だからね」
『あははー』
サクラはハンター試験前に血が嫌いだと言っておいていた。血を見たら卒倒することも。それをしっかり覚えていてくれたのだ。
(こういうとこ本当に優しいんだから。好きになっちゃうぞ!)