第4章 お手伝い × 王道
「おや、お嬢さんどうかされましたか?」
目の前の男はサクラの様子を見て、自分に一目惚れしたと勘違い。なんとナルシストでもあったのだ。
『いえ…何も』
「そうですか?僕はマークと申します。マーク=サミュエル。貴女のお名前を…」
「サクラです…」
「サクラ…なんて素敵な名前だろう!是非僕と話でもしませんか?」
『え、ええ、是非…』
建前でにこりと笑顔を作ってみたが、当然引きつる。
それに気付かずドヤ顔で、ではあちらへ、と手を差し出す男。
『は、早くあちらに行きましょう?ここは人が多いですから』
差し出された手を華麗に無視してサクラはそそくさと移動する。
「おやおや、可愛らしいお姫様だ」
そのセリフを聞いて身震いするサクラ。
(不細工でキモくてナルシストな上にMかよ!イニシャルもMだしな!!)
悪態をつかずにはいられない。
男は、ニコニコいやニヤニヤしながらサクラの後を追った。
―――…
「~で、~なんだよ?すごいだろう?」
『ええ…』
パーティ会場から少し離れたテラスで話すサクラと息子。しかし、息子の自慢話は全く頭に入ってこなかった。
(なんなのこの男!顔近づけんじゃねぇぇ!)
サクラの頭の中はマークの距離の近さに怒り狂っていた。
しかし、こんなことをしている場合ではない。
パーティ会場から離れたとはいえ、テラスでは人目に付きすぎるためどうにかして二人きりにならなければいけないが…
(早く終わらせて帰りたい!!何かいい方法は…あ、そうだ!)
『あの…私ちょっと酔っちゃったみたいなので休みたいんですけど』
「それは大変だベイビー。すぐに部屋を用意しよう」
(ベイビーってなんだよ!)
『ええ、お願いできますか?』
「もちろんさ、待ってておくれ」
『はい…』
ウインクしながら去っていく息子。姿が見えなくなるのを確認すると、
『おえぇぇ…ほんと無理なんだけど!食べたもの全部出そう!』
と吐き気を落ち着かせるのだった。