第4章 お手伝い × 王道
――――サミュエル邸…
「お嬢さん、こちらで一緒に…」
「いえ、こちらで僕と一緒にワインでも!」
「いやいや、私と外で散歩など…」
『え、あ、あのその…』
イルミに連れてこられた場所はお城を思わせるような豪邸で、盛大なパーティだった。
この豪邸の息子が今回のイルミのターゲット。
囮というのはその息子に何とかして気に入られ、二人きりになったところでイルミがその息子を殺す、という計画だった。
『それって私じゃ無理だと思うんだけど…』
計画を聞いたサクラは何度もそうイルミに抗議したが、絶対大丈夫という変な自信を持っている彼に最終的に丸め込まれた。
そして、イルミの思惑通りパーティの注目の的となったサクラの周りにはあっという間に男性の人だかりができていた。
その様子をなんとなく面白くなく感じつつも、その隙にイルミは邸内へ侵入して息子の部屋に身を潜めた。二人きりになるなら、恐らくこの部屋だろうと踏んで。
「さぁ、こちらへ!」
「いや、こっちだ!」
「なによあの女!!」
周囲の熱ーい視線と嫉妬の視線を集めながら、サクラはあっちへこっちへと引っ張られていた。
「こらこら、レディをそんな扱いするものではないよ。」
人だかりの後ろから、少し粘着質な特徴のある声がした。今までサクラを囲んでいた男たちが道を開けるとそこには…
『きっ…!(きんも―――!!)』
思わず両手で口を覆うサクラ。
目の前に現れた男性はお世辞にもかっこいいとは言えないどころか、この世のものとは思えないくらい不細工だった。
周りのひそひそ話から、この男が例の御子息だと気付く。
(じょ、冗談!こんな男と二人きりなんて死ぬ…)