第4章 お手伝い × 王道
(あー…)
イルミは立ち上がりサクラを引き寄せて抱き締めた。
鼻をくすぐる甘い香りに堪らなくなって、更にぎゅっと抱き締める。
『わぁっ!イルミ!?』
「…ちょっとこのままおとなしくしてて」
『えっ、うん…』
(イルミ、なんか変)
(自分でも無意識だった。でもこうしてると落ち着く…)
サクラに甘えるように肩に顔を埋めて目を閉じる。言われた通り大人しくしてくれるサクラが嬉しかった。
―――――…
しばらく抱き締められたままじっとしていたサクラだったが、動く気配のないイルミに恐る恐る声を掛けてみる。
『イルミ?そろそろ仕事行かないとなんじゃ…』
「うん、そうだね」
何事もなかったかのようにふいと離れたイルミ。さっきまで磨いていた鋲をしまいこんだ。
(男の人に抱きしめられるとか久しぶりすぎてやばかった!思わず抱き返そうかと…)
イルミがイケメンすぎるから…と両手を頬に当てて顔の熱を抑えようとするサクラ。
このあと更に赤面する出来事があるとも知らずに。
仕事へ向かうときにサクラの足では遅すぎる。
つまり…
「サクラ行くよ」
そう言ってイルミはサクラをひょいと抱き上げた。
『!!??!?!?!』
「ん、どうしたの?固まって」
『だ、だだだだだって!これって』
俗に言うお姫様抱っこじゃん!
「こうじゃなきゃ連れていけないだろ。ちゃんと掴まって口閉じてないと舌噛むよ」
『ひいっ!』
サクラが掴まったか掴まってないかのうちにイルミは自室の窓から飛び降りた。
羞恥心などどこへやら必死にイルミにしがみついていたのは言うまでもない。
イルミはイルミで
(あーこれいいな。あったかいし柔らかいしいい匂いするし)
颯爽と走りながら邪なことを考えているのだった。