第4章 お手伝い × 王道
顔を真っ赤にして妄想しながら着替えようとするサクラは気づいていなかった。
イルミがまだ隣にいることに。
『い――――っ!!?!?』
「うるさいな」
『うるさいじゃないよ!何でいるの!』
「さっきからずっといるじゃん」
『そうじゃなくて…着替えるんだから出てってよ!』
「いいじゃん、減るもんじゃないし」
『減る!!早く!!』
ビッ!とドアを指差すサクラに、
「…ちぇ」
とつまらなそうにイルミは出て行こうとする。それを見てちょっと可愛い、なんてことを考えながらぼーっとしているとイルミが、
「やっぱりこのまま見てようかな。着替えないみたいだし」
と言うので慌ててイルミの背中を押して部屋を出て行かせ、ようやく着替え始めた。
イルミは自室でサクラを待ちながら、今日使用するであろう愛用の鋲を磨いている。
(次はどうやってからかおうかな)
サクラをからかって遊ぶ楽しさを知ったイルミは、顔には出ないもののうきうきしていた。
(いちいち必死になってかわいいんだよね)
そんなことを考えながら。
…コンコン
「サクラ?いいよ、入って」
『ごめんね、イルミお待たせ!普段ドレスなんて着ないから手間取っちゃって…』
「時間はあるか、ら…」
ドアに目線を向けたイルミの動きが止まる。着慣れないドレスで照れているのか、頬を染めているサクラ。
すらりと伸びる手
スリットから覗く白い脚
大きく開いた胸元
体のラインが出るそのドレスでサクラの華奢な体が際立っていた。
『イルミ?どうしたの?も、もしかして変かな?』
「……」
心配して近づいてくるサクラから目が離せない。呼吸がうまく出来ない。胸が痛む。
ただサクラの姿を見ただけなのに。今の自分の状態はなんなのか。
(やっぱりオレおかしいな)
「…いや、変じゃないよ」
『そ、そうかな』
「うん。似合ってるんじゃない?」
冷静を装って感情のない声色でそんなことを言ってみる。
『ほんと!?ありがとう。』
そうすればまたサクラは頬を染めて嬉しそうな顔をしている。