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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第1章 始まり【共通物語】


「つうか、おまえら。土方とか副長とか呼んでんじゃねえよ。伏せろ」
「ええー?伏せるも何も、この隊服を着てる時点でバレバレだと思いますけど」

浅葱色の羽織を着た浪士。
江戸にも彼らの噂話は流れてきていた。
人斬り集団、腕だけは確かな百姓の集まりなど色んな噂が流れてきている。

でも、余計な事は言わないでおこう。
殺される可能性は少しだけ無くなったのに、余計な事を呟いたせいで殺されるかもしれないのだから。

「……死体の処理は如何様に?肉体的な異常は、特に現れていないようですが」
「羽織だけ脱がせとけ。……後は監察の方で何とかする」
「承知しました」
「新選組の隊士が斬り殺されてるなんて、僕たちにとっても一大事ですしね」

やっぱり、『新選組』なんだ。
私や千鶴と同じ、江戸出身者が多い殆どが百姓や脱藩浪人が多いと呼ばれる人斬り集団の新選組。
壬生狼なんて呼ばれてる事もあるらしいが……。

なんて考えていれば土方と呼ばれた男は、私と千鶴を見下ろしながら圧を込めた言葉を投げかける。

「ま、後はここに居た奴らが黙ってりゃ、世間も勝手に納得してくれるだろうな」

(黙ってろという意味なんだろう…)

世間も勝手に納得してくれる。
その言葉通り、京では人が死ぬぐらい当たり前なのだろう。

だけど、怖い。
この人達も、人が死ぬのが当たり前だとなっているこの土地も怖い。

「ねぇ、ところでさ。助けてあげたのに、お礼のひとつもないの?」
「「……え?」」

唐突な言葉に私と千鶴の声が重なる。

「そんな、助けてあげたのにって……」
「今さっきまで、殺すかどうか話してたくせに……」

驚く言葉に目を見開かせていた私の横で、何故か千鶴は納得したかのような表情をしている。
そして、まさかと思ったが千鶴は立ち上がると袴についた土を払い、身だしなみを整えると頭を下げた。

「あの、ありがとうございました。お礼を言うのが遅くなってすみません。……色々あって、混乱していたもので」

千鶴の言葉に、一と呼ばれていた人は衝撃を受けたように目を見開かせて、土方と呼ばれていた人は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

「ち、千鶴……」
「わ、私もおかしいなとは思いました!思ったんだよ!?千尋!でも、この人がお礼を言えと」

ふと、私達にお礼を言えと言った人を見れば腹を抱えて笑っていた。
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