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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第4章 動乱【土方歳三編】


確認するように斎藤さんが言葉を吐けば、土方さんはため息を吐く。
すると原田さんは驚いた表情をしながら、息切れをする背中をさすってくれる。

「よく俺らと合流できたな。京の地理には詳しくないんだろ?」
「途中まで、山崎さんが……一緒にいてっ!」
「会津や、所司代はどうなった?もう池田屋に行ってるのか?」

途中で山崎さんに聞いた。
会津藩や所司代は池田屋に向かっていないと、夕暮れ時前には連絡はしていたのに。

「いえ……向かっていないとの事です」

土方さんは呆れ顔をしながらも短い思案の後で決断したようだ。

「斎藤と原田は隊を率いて池田屋へ向かえ。俺は、他所で別件を処理しておく」

斎藤さんと原田さんは頷くと、副長である土方さんの判断を信用して即座に隊を率いて動き出す。
そして私は彼らを見ながら、やっと息を整えることが出来て、何度も何度も深呼吸をした。

息を整えて立ち上がれば、歩き出していた斎藤さんは足の動きを止めた。
そして、私の方へと視線を向けると口を開く。

「あんたもこれ以上の単独行動は危険だ。俺たちか副長か、どちらかに同行しろ」
「は、はい……」

ここに留まるのは恐らく危険。
だからと言って、斎藤さん達の方に向かっても足でまといになるかもしれない。
ならば、土方さんについて行った方がいいだろうと思っていれば、土方さんは何かを思い出したかのように目を細めた。

「伝令ご苦労だったな。先手を打てるのは、おまえの手柄だ」

まさか、そんな言葉をかけられるなんて。
驚きながらも照れしまいそうで、唇を少しだけ噛み締めて顔が緩みそうになるのを我慢する。

ふと、土方さんの言葉を思い出す。
彼は今さっき【先手を打てる】と言っていたが、それはどういう事なのだろう。
池田屋では既に戦いが始まっているはず……先手を打てるのだろうか。

裏通りから表通りへと出ると、土方さんは辺りを見渡しながら足を止めた。

「土方さん、どうして大通りに出たんですか?」
「臆病風吹かすような連中は、目立つことしか頭にねえって相場が決まってるんだよ」
「目立つことしか……?」

首を傾げた時、音も無く唐突に山崎さんが姿を現して土方さんの元へと歩み寄っていた。

「山崎さん……!」

私は彼の姿を見てほっとした。
どうやら怪我も無さそうで安堵していれば、山崎さんは一瞬だけ私の方へと視線を向ける。
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