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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第4章 動乱【土方歳三編】


どうやら山南さんの思惑が当たってしまったらしい。
何人かの人の気配を感じるのと、山崎さんから薄らと殺意が浮かんでいる。
この場合、山崎さんが土方さんに伝えるべきではないのだろうか。
私は山崎さんの方へと視線を向ける。

「山崎さんが行くべきです。ここは私が残ります……足止めが出来るか分かりませんが」
「馬鹿なことをいうな!君は人を斬ったことがあるのか?人を斬れるのか?」

その問いに息を飲む。
人なんて斬ったこともない、人を斬れるのかと言われて『はい』とは応えられない。

斬る場所が悪ければ人は簡単に死んでしまう。
斬った時に血が溢れ、地面を赤く染める……そう考えた瞬間、嫌な記憶が溢れ出す。

「引きつける役ならば俺がやる。君は走れ!」
「……分かりました」

山崎さんの言葉に頷くと、私は真っ直ぐに前だけを見て走り出した。
そして次の十字路に差し掛かった瞬間、白光が煌く。

目の前に刀がある。
そう思い、刀に手を持っていく前に山崎さんが刀を弾き返していた。

「君は惑うな!ーー直に合流できる!白の隊服を目指して、このまま走れ!」
「……っ、はい!!」

ただ真っ直ぐに走る。
白の隊服を探して走っていれば、背後からは刀どうしがぶつかり合う音が聞こえてきた。
その音が気になりながらも、歯を食いしばりながら走る。

体力があると言っても、こんなに長く走った事はあまりない。
息が上がり始め、足が痛み始めるがとにかく走り続けていた時だ。
不意に横合いから差し込んだ灯火の明るさに目がくらむ。

「うっ…!」

もしかして長州の浪士か。
そう思い、目をくらませながらも刀に手をかけようとした時だった。

「雪村か……!」
「っ、土方さん!」

目の前には土方さんがいて、原田さんや斎藤さん達の姿もあった。
ということは私は四国屋に辿り着けたのだ。

「お前が来たって事は、なにか伝令があるのか?」

座り込みそうになっていれば原田さんが手を差し伸べてくれて、その行為に甘えて手を握らせてもらった。
そして息切れをしながらも、私は声を張り上げる。

「ほ、本命はっ、池田屋っ……!!」

私の言葉に土方さんの表情が厳しくなり、周りの隊士さんたちの表情も厳しくなっていく。

「本命は、あっちか!?」
「はいっ!!」
「……敵の会合場所は池田屋である、と?」
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