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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第18章 修羅の轍【沖田総司編】


元々、西本願寺は尊王派であり長州藩に肩入れをしていたり攘夷派の浪士たちを匿っていたりしていたと聞いている。
そんな彼らにとっては新選組は招かれざれる客。

そして、西本願寺には無理矢理引っ越してきたようなもの。
彼らが私たちを嫌がるのはよく分かるし、この場を去って欲しいと思う気持ちもわからないわけじゃない。
そう思っていれば、山崎さんは困ったような表情をしながら近藤さんに尋ねた。

「それにしても、急な話ですね。まさか、昨晩の騒ぎが原因ですか?」
「ああ。ここであのような騒ぎを起こされては困るということらしい。察するに、長州や薩摩……その辺りからも何か言われているのだろうな」

昨晩の騒ぎが原因なら私たちのせいだ。
もし風間千景が来なければ、あんな騒ぎがなければ西本願寺からも『出ていって欲しい』という感じに言われる事はなかったはず。

「申し訳ありません。私のせいで、皆さん方にご迷惑をおかけして……」
「申し訳ありません……。あの騒ぎは私たちのせいで」
「いや、そうではなさ。元々、無理難題を言ってここに押しかけたのは我々なんだからな」
「しかし、どうするのですか?屯所移転となると、また候補地選びからやり直しになりますが……」

あの時は伊東さんが『西本願寺はどうか』と言ったので直ぐに決まった。
だけど今回も直ぐに屯所移転地が決まるかどうか分からない。
そう思っていれば、近藤さんが少し難しそうな顔をされた。

「それについてだがな……。移転先の敷地も屯所も、全部、西本願寺が用意してくれるそうだ」
「ええっ?」
「敷地も屯所も?」
「ほう、そりゃあすごい。よっぽど我々に出て行ってほしいんだね」
「まあ、ここは素直に受け取っておいた方が良きそうだな。また、忙しくなるぞ」

そうして西本願寺は新選組の新しい屯所、費用全額負担で建ててくれることなった、新選組の三ヶ所目の屯所となる、不動堂村屯所が完成することに。
隊士数十人が一度に入浴できる大きなお風呂場や、木々の匂いがする真新しい道場などもある。
そのためか、入隊したばかりの隊士さん達は色めき立っていた。

そして夏を迎える時期。
新選組と私たちは二年と少しの間を過ごした西本願寺を後にして、新しい不動堂村屯所へと移転した。
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