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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第18章 修羅の轍【沖田総司編】


恥ずかしかっただけです……という言葉が何故か喉から出てこない。
そんな中、境内の方からは剣戟の音が聞こえてくる。

「外は大騒ぎだね。……鬼が来てるんだって?」
「は、はい……。そうなんです」
「本当は、僕も出たいんだけどね。もし出たら、近藤さんに叱られちゃうから」

そう呟く沖田さんは、どこか寂しげな眼差しで境内を見やった。

「……でも、近藤さんが出たんだよね?」
「はい。ですけど相手が風間ですし……心配で」
「大丈夫だよ、あの人はすごいんだ。僕なんかより、ずっとね」

そう告げる沖田さんの瞳には、近藤さんへの純粋な憧憬が宿っている。
どうして沖田さんはこんなにも、近藤さんのことを信頼しているんだろう。

そんなことを思っていると……。

「雪村君、無事か?」
「千尋!」

山崎さんと千鶴が、、息せき切って飛び込んできた。

「あ、山崎さん!千鶴!」

私は慌てて千鶴に駆け寄り、彼女が無事だった事に安堵した。

「山崎さん、どうなったんですか?風間たちは……」
「何とか、撤退させることができた。恐らく今夜はもう、戻ってはこないだろう」
「……良かった」

私が安堵していれば、千鶴が私の背中を撫でてくれた。

「……ほらね、だから言ったでしょ」

そう微笑む沖田さんの表情さ、寂しげな色が宿っている。
もしかしたら沖田さんは、近藤さんと本当は一緒に戦いたかったのかもしれない。

「雪村君たち、部屋に戻りたまえ。そろそろ休んだ方がいいだろう」
「はい」
「……はい、わかりました。それじゃ、沖田さん……」
「はいはい、お休みなさい」

私は沖田さんに見送られて、千鶴と共に自分たちの部屋に戻ったのだった。



❈*❈翌朝❈*❈


「おはようございます、皆さん」
「おはようございます」

あの騒動が起きた翌日。
私と千鶴は一緒に広間へと向かうと、そこには井上さんたちの姿があった。

「ああ、おはよう、雪村君たち。昨夜は、よく眠れたかい?」
「あ、えっと、その……はい」
「はい……たぶん」
「……無理はしなくていいよ。寝不足なのは、顔を見ればわかるからね」

私たちは昨日、なかなか眠ることが出来なかった。
あんな事があったばかりだったのか、眠気はなかなか来なくて寝つけたのは夜明け近くの時。
千鶴も同じだったらしく、二人して寝不足になっていた。
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