第18章 修羅の轍【沖田総司編】
彼が言う【まがい物】は恐らく羅刹のこと。
思えば、羅刹は鬼と同じような所がいくつもある……だから彼は羅刹をまがい物と言うのだろう。
「作られたまがい物の鬼たちの哀れな姿は、おまえも目にした筈だな?名を成す為、あのようなものを生み出す連中に手を貸すことが正しきことだと、本気で思っているのか?」
「私は……」
羅刹の存在を肯定しているわけじゃない。
あんな物を生み出すべきじゃないとなんども思った時はある。
でも余所者である私が、とやかく言える立場じゃない。
だけど、羅刹を生み出しているのは理由がある。
新選組の人達は事情があって、羅刹の実験をしているのだ。
だから、事情をしらない人にとやかく言われたくは無い。
「新選組の事情も知らないのに、偉そうにとやかく言わないで!」
「事情を知ったからと言って、目をつぶれというのか?」
「目をつぶれというわけじゃない。だけど、あなたがとやかく言う必要はないはず……!」
そう叫んだ時だった。
砂利を踏む足音が聞こえ、そちらへと視線を向けるとそこには土方さんと原田さんがいた。
「新選組屯所に討ち入るとは、大した度胸だな。お千とかいう女といい、てめえといい……ここは、鬼とやらの集会所じゃねえんだぜ。これ以上、好き勝手はさせねえ。覚悟はいいか」
「てめえ、嫁取りの為にわざわざ俺たちの元に押しかけてきてやがるんだってな?こんだけ肘鉄食わされりゃ、そろそろ思い知ってもいい頃だと思うが……。鬼っつうのは、よっぽど諦めが悪いみてえだな」
「土方さん、原田さん……」
彼らの後ろには、山崎さんや他の隊士さんたちの姿もある。
その中には見当たらない人もいて、私は思わず目を見張ってしまった。
(まさか……風間千景に?)
嫌な方へと考えが走る。
もしかしたら、島田さんのように気を失っている人もいるけれども、命を落とした人もいるかもしれない。
「貴様らには、この者もあの雪村千鶴の値打ちなどわかるまい。鬼は、鬼の元にあるのがさだめ。相応しい者の手にあってこそ、真価を発揮するというものだ」
「はっ、真正面から口説いて振られんのが怖えからって無理矢理連れ去ろうっつうのか?格好悪いにも程があるぜ、てめえのやり方はよ」
土方さんが鋭い目で風間千景を睨みつけていた。