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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第4章 動乱【土方歳三編】


軽い口調の山南さんだけども、その表情は真剣そのものだった。
本命とされていた四国屋だったが、まさかの少人数で向かい、しかも千鶴がいる池田屋が本命だったなんて…。

「雪村君、早速君には仕事をしてもらいます。まず、山崎君と共に敵の所在地は池田屋であると、四国屋へ向かった土方君に伝えてください」
「お言葉ですが、山南総長。伝令なら自分一人で可能です」
「伝令に向かう途中、他の浪士に足止めされるかもしれません。それ以外にも、長州側の援兵が存在する可能性もあります。もし、伝令の道中に敵と遭遇したのなら、土方君との合流も遅れてしまうでしょう?雪村君に伝令を任せたのはその為です。彼女は剣術の心得もありますから……」

私は最初、千鶴と共に池田屋に向かうはずだった。
だが、山南さんが私には屯所に残り四国屋へと向かう伝令役にしたいと言ったのだ。
何故だと最初は思ったがこの為だったのだろう。

千鶴より剣術に心得がある私の方が、四国屋へと伝令の際に敵と遭遇しても対処はなんとかなる。
だから山南さんは私をここに残したのだろう。

「さて……、私の言いたいことはわかりますか?」
「……はい。自分が長州援兵の足止めを行い、最悪は彼女だけでも土方隊に合流させよ、と」
「ええ、そういうことです。では、雪村君……お願いしますね」
「……はい!」

私は立ち上がると刀を腰に差した。
すると山崎さんがこちらへと近づいてきて口を開く。

「確か、雪村千尋君だったな。剣術の心得はあると聞いたが」
「はい」
「残念ながら君の安全は保障できないが、大丈夫か?」
「大丈夫です。自分の身は自分で守れますので」
「わかった。では、行くぞ」

広間から飛び出すと山崎さんが私に視線をやってから言葉を呟く。

「全力で俺についてこい」
「はい!」

私は山崎さんの後につづいて、彼の指示通りに全力で駆け出した。
夜の通りを駆け抜けながら、池田屋にいる千鶴の事が心配でたまらなかった。

(千鶴は、大丈夫なのかな……)

そう思いながら走っていると、ふいに前を走っていた山崎さんが足の動きを止めた。
そして鋭い視線を後ろへ投げる。

「何があっても、この通りを走り抜けろ。……後ろを振り向く必要は無い」
「誰かが、いるんですか…?」
「君が気にする必要はない」
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