第17章 亀裂の響き【沖田総司編】
「……当然だ。これ以上、あいつらの好き勝手にさせるつもりはねえからな」
「でも……本当にいいんですか?伊東はんや皆さんが、ここからいなくなってしまっても……」
「伊東派の奴らが抜けたところで、困ることはねえよ。ま、平助と斎藤と一緒だっていうのは、少しばかり計算外だったがな」
「まあ……な。彼らの期待に応えられなかった我々の落ち度でもあるが……」
平助君は伊東さんと昔からの知り合いだと聞いた。
だけど、斎藤さんは土方さんの事を凄く尊敬していてとても信用していたはず。
(なんで、二人とも伊東さんに着いていく事を決めたんだろう……)
本音を言えば行ってほしくなかった。
行くのを止めてほしいと願ったけれど、彼らが決めた事を私なんかが否定してはいけない。
そう思いながら、私と千鶴は広間を後にした。
「……まさか、こんなことになるなんて」
「……思わなかったよね」
廊下に出れば何時より屯所は静かだった。
昨日までは、いつも通りの朝を迎えて賑やかな朝食の時間が来るんだと思っていたのに。
「でも、伊東さん達が隊を離れることを、新選組に残る人はどう思ってるんだろう……?」
「どう、だろうね」
気になっていたのは、ここに残る人達の気持ち。
伊東さんが隊を離れることを、新選組に残る方々はどう思っているんだろう……。
「……他の人の意見、聞きたい」
「うん……」
「中立的な立場の人に聞くのがいいのかな……」
「中立的立場って……例えば?」
「……沖田さんかな」
勿論、近藤さんや土方さんと誰よりも親しいのはわかっているけれど。
沖田さんは、派閥争いには興味なんてなさそうだし。
案外彼から冷静な意見が聞けるかもしれない。
沖田さんの部屋に行ってみようかな。
そう思っている時だった。
「雪村君たち、どこに行くつもりだ?」
「山崎さん。沖田さんの所に行こうかと」
「沖田さんの……。彼に、何か用事でもあるのか?」
「ええ、ちょっと……。山崎さん、沖田さんがどこにいるかご存知ありませんか?」
「恐らく、中庭だろう」
「ありがとうございます。行ってみます」
「昨日の今日なんだから、二人ともあまり無理をしないようにな」
山崎さんは怪我をした千鶴と、倒れた私を気遣ってくているようだ。
「はい、ありがとうございます」