第17章 亀裂の響き【沖田総司編】
「実はですね……、伊東さんたちは、ここを出ていくことになったんです」
「えっ?出て行く、って……」
「新しく、隊を立てることにしたらしい。新選組とは別にね」
井上さんと島田さんの言葉に、千鶴は目を見開かせながら驚いていた。
そして千鶴は戸惑いながらも、井上さん達に質問をする。
「そんなこと……、できるんですか?」
「近藤局長と土方副長が、伊東さんと話し合って決めたということです」
島田さんはゆっくりと、伊東さんたちが御陵衛士という隊を作り、そして新選組を出て行くことを決めたことを千鶴に説明してくれた。
水が合わない、そして三年もの間羅刹のことで謀っていた事を許せないという理由で御陵衛士を設立して出ていくことを。
そして、羅刹の事は幕命からの密命だから黙るのを条件として黙って出ていかせてほしい、そして隊士をわけてもらうということ。
近藤さんは隊士を連れていくのに本人の承諾を得てからと言ったらしい。
そして、斎藤さんと平助君は承諾したということ、御陵衛士は表向きは協力関係にあるという事を全て説明してくれた。
「じゃあ、平助君と斎藤さんが……?」
「伊東さんについていくそうだよ。驚いたねえ。伊東さんと昔からの知り合いだった東堂君はともかく、斎藤君は、そんな様子は全くなかったのに」
「そんな……」
「それに、伊東さんは千尋君も連れて行こうとしたんです」
「……え!?」
「千尋君をね、自分の小姓として御陵衛士に来て欲しいと言ったんだ」
「もちろん、断ったよ」
「……そっか」
私の言葉に千鶴は少しだけ安堵したような表情をうかへだけれども、直ぐに悲しそうな表情を浮かべた。
「心配することはないよ、千鶴君。言っただろう?これは友好的は関係を前提とした分離だ」
「近藤さん……」
悲しそうな表情をしていた千鶴に、近藤さんは安心させるように微笑みながら歩み寄った。
だけども、千鶴は安心した表情は浮かべずに戸惑ったような悲しそうなもの。
千鶴の考えている事が何となく分かる。
いつもなら安心できる近藤さんの言葉だけど、今日は安心できなかった。
嫌な予感のような、何かが胸をざわつかせていたから。
「そうはいっても、今後は衛士と新選組隊士との交流は禁止するつもりなんだろう?」
「え、禁止?」