第17章 亀裂の響き【沖田総司編】
「それに、彼女が、君をおびき寄せるつもりだったとしたら?この場所は、人目にもつかないし、叫んでも声が届きにくい。格好の襲撃場所だよ」
「……はい」
彼の言う通りだ。
今日は何もなかったけれども、もし本当に南雲さんが敵だったら、もしあの人が罠を張っていて周りに味方がいたとしたら。
私は多少なりは剣を扱える。
だけど多少なだけであり、もし相手が沖田さん達のような剣の使い手ならば、無事とは言えなかった。
「巡察に同行してる以上、行動には注意してくれないと。君は刀を上手く扱えるけど、ただそれだけでしょう。自分は約立たずの子供なんだってこと、少しは自覚したら?」
「……すみませんでした。軽率な事をしてしまって」
彼の言葉は最もであり、私は項垂れながら謝罪の言葉を口にした。
すると沖田さんはため息をはきながら、肩をすくめて見せる。
「……やれやれ。お説教なんて柄じゃないんだけどね」
「本当に、すみませんでした……」
「まあ、妙な遠慮はやめなよ。頼るべきときは、頼ればいいんだからさ。君には、いや……君たち双子の姉妹には散々迷惑かけられてるし、今更、何とも思わないけどね
そう言うと、沖田さんは微かに微笑んで見せる。
だけど彼の言葉は深く私の心を刺していて、手を強く握りしめながら私は俯いたままだった。
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その日の夜の事ーー。
『約立たずの子供』という沖田さんのその言葉は、夜になっても忘れることは出来なくて、私は床に入ってからも沖田さんの言葉を思い出してしまい眠れなかった。
「約立たずの子供……」
確かにその通りなんだ。
それに元々分かっていた事なんだから、落ち込む必要はないのに。
でも、指摘された事に私は悲しくなっていた。
「その通りなのに、落ち込む必要ないでしょう……」
自分にそう言い聞かせるけれども、落ち込みは増すばかり。
だけど、どうしても私は南雲さんにあの夜邪魔したのは南雲さんなのか聞きたかった。
「でも、行動には気を付けなきゃ。お世話になっている彼らに迷惑なんてかけたらいけない……」
そう決意した時だった。
隣の千鶴の部屋から激しい音が聞こえて、思わず飛び起きてしまう。
「え、なに……!?」