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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第17章 亀裂の響き【沖田総司編】


突然、沖田さんは咳き込みだして背中を丸めていた。
その咳の音に驚いた私は、南雲さんを追いかけようとしていた足を止めた。

「げほっ、ごほ、げほっ……!」
「沖田さん!」
「……来るなっ!」

駆け寄ろうとした私と千鶴に、沖田さんは手を上げてから制した。
その声が鋭くて驚いていれば沖田さんはまた咳き込みだし、苦しげに顔を歪ませていた。

「こほっ、こほっ……。大丈夫……だから。君たちは……、そこでじっとしていて。こほっ、こほっ、こほっ……」

声は柔らかく優しく感じたけれども、彼の目は完全なる拒絶が見えた。
その目に思わず駆け寄ろうとした足を止めながらも、何度も咳き込む沖田さんを見ていた。

やがて、沖田さんの咳が止まった。
だけど彼は、苦しげに息を吐きながら頬には汗を浮かべている。

「はあ……はっ、はあ……」
「沖田さん、あの……本当に、大丈夫ですか?」
「……何が?」

千鶴の言葉に、沖田さんは質問を質問で返した。

「何がって……。どこかで休みませんか?顔色も良くありませんし……」
「顔色が悪いのは、君の妹を追いかけて走ったせいだよ。それに、今は巡察の最中でしょ?休んでる暇なんてある筈ないじゃない」
「でも……」
「少しは休んだ方がいいのでは……」

私を追いかけたからと言っても、それだけで顔色が悪くなるような人じゃないはず。
それに最近、沖田さんは咳をしている事が多くなり、顔色が悪いことも多々ある。

「もう大丈夫さ、落ち着いたから。それよりも……さっきの人……薫さんのことだけど」
「あ……はい」
「制札事件のことを確かめたかった気持ちは、よくわかる。大事なことだからね。それに、千尋ちゃんは余計に気になったんでしょう?千鶴ちゃんとよく似ているから」
「……はい」
「でも、それなら尚のこと、一人で動くのは無謀だよ。もし彼女が敵で、仲間が近くに隠れてたらどうするつもりだったの?君一人で、対処できた?」
「それは……」
「君は多少は剣が使える。でも、多少なんだよ。それに、無用な心配だったって言い切れる?」
「……いいえ」

沖田さんの言葉に、私は段々と顔を俯かせてしまった。
確かに無謀な事をしてしまったし、安易に行動をするべきじゃなかった。
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