第17章 亀裂の響き【沖田総司編】
「もしそうなら、問題大ありだね。君には死んでもらわなきゃならないかなあ」
「沖田さん……」
何時の間にか背後には沖田さんと千鶴が立っていて、どうやら追いかけてきたらしい。
すると、南雲さんは沖田さんを見ると柔らかい笑みを浮かべた。
「これは、新選組の沖田さん。いつぞやは、どうもありがとうございました」
南雲さんはお礼の言葉を口にして、沖田さんへと頭を下げた。
だけど、沖田さんは彼女のお礼なんて無視をして、鋭い目付きで彼女を見下ろす。
「で、答えはどっちなのかな?心当たりはあるの?ないの?」
「死んでもらうなんて……。そんな恐ろしいこと、仰らないでくださないな。三条大橋なんて、昼間は誰でも通る所ではありませんか。それに、夜なんて……。あの制札の騒ぎがありましたから、怖くて近づけません」
彼女は困ったような表情を浮かべていた。
先程までは、何処か怪しげな表情をしていたのに今はか弱い女性に見える。
すると、南雲さんは千鶴の方へと視線を向けてから眉を下げた。
「ただ雪村さんに顔が似ているというだけで私を疑うなんて、ひどいです……」
「ただ、じゃないと思いますが」
「千尋!薫さんは違うだろうし、そこまでうたがわなくても……」
「……甘いなあ、千鶴ちゃんは。そんな簡単に疑いを解くなんて。もし犯人だとしても、自分から【私がやりました】なんて言うわけないじゃない」
「それは……」
「彼女を信じてあげようと思ったのは、どうして?自分と似た顔をしてるから?それとも、女の子だから?君の妹は、あんなにも疑ってるのに」
沖田さんの言葉を聞きながら、私はただ南雲さんを見ていた。
彼女には三条大橋の制札だけではなく、あるもう一つの事を聞きたい。
なんて思っていた時だった。
南雲さんは突然、さりげなく一歩下がると声をかけてくる。
「……もう、行って構いませんか?用事がありますから、失礼します」
「あっ……南雲さん!」
まるでこの場から逃げるように、彼女はあっという間に立ち去ってしまった。
彼女には聞かなければならない事がある。
だから、このまま行かせることは出来なくて南雲さんを追いかけようとした時だった。
「……こほっ、こほっ!こほっ!!」
「沖田さん!?」
「沖田さん!?だ、大丈夫ですか?」