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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第17章 亀裂の響き【沖田総司編】


にっこりと沖田さんは上機嫌で笑う。

「そしたら涼しみたくなって、ここに腰を落ち着けたところ」
「あのですね、沖田さん。いくら天気がいいからって、今はまたわ二月なんですよ?こんなところにいたら、すぐに風邪を引いてしまいます」
「ねえ、千尋ちゃん。君って意外と口うるさくて、しかも変に心配性で……土方さんみたいだね」

沖田さんにそう言われると、なんだがとても複雑な気分になってしまう。
もしかしたら土方さんは、いつもこんな脱力感に襲われているのかもしれない。

何となく、今この瞬間で土方さんの苦労がわかるような気がした。
あとで、お茶を差し入れしに行こうと決めた。

「あ、駄目です沖田さん!」

そう思っていた瞬間、沖田さんは濡れたままの髪をそのまま結おうとするので慌てて止めた。

「きちんと乾かさないと、頭が冷えてしまいますよ」

私は素早く彼から手ぬぐいを取り上げてから、彼のぬれた髪の毛の水をぬぐい始める。

「ねえ、千尋ちゃん、強引って言われない?」
「そうかもしれませんね。でも強引にさせてるのは沖田さんですから」
「君ってこんな子だっけ?もっと大人しかった気がするんだけど……いや、大人しくないっか。お節介だし口うるさいし、変にお節介だったね」

その言葉に私は眉を寄せた。
沖田さんも自分の体調の自覚はあるはずなのに。
自分の身体に対する気遣いがあまりにもなさすぎる……。

「もういいよ、千尋ちゃん。ほとんど乾いたみたいだし」
「あーー」

沖田さんは私の手から逃れると、素早く髪を結い直した。
その姿をなんとも言えない心境で、じっと見つめていると、ちょっと困ったみたいに沖田さんは目を逸らす。

「いきなり黙り込まれたら、反応に困るんだけど……。まだ文句が言い足りない?それとも僕に用でもある?」
「いえ。そういうわけじゃないんですけど……あっという間に髪を結ってて、すごく器用だなあと思って……」
「別に器用でもないと思うよ。ただ慣れてるだけじゃないかな。この髪型に結い上げるのだって、何度練習したかわからないしーー」

彼は不意に言葉を切ると、私のことを見つめてきた。

「沖田さん?どうかしたんですか?」
「千尋ちゃん、ちょっといい?ひとつ質問したいんだけど」
「質問……?どうぞ」
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